賃上げ要求は「6%中心」へ 給料と中小企業の価格はどう動く?
ひとことで
来春の賃上げ要求は6%中心へ。ただし要求額と基本給、手取りの増加は同じではありません。
情報の確かさ:二重確認済み
結論
連合は2027年春闘で、定期昇給を含む賃上げを「6%中心、5%以上」とする基本構想を示しました。月給30万円なら6%は月1万8,000円に相当しますが、これは交渉上の目安です。基本給や手取りが一律に6%増える決定ではありません。
何が起きた?
連合が10月22日に確認した構想では、賃上げ分は「4%中心、3%以上」、年齢や勤続に伴う定期昇給を含む全体は「6%中心、5%以上」です。中小労組には格差是正分を加え、2万円以上・6%以上を目安としました。
背景には物価と生活費があります。総務省によると、9月の消費者物価は前年同月比2.1%上昇。厚生労働省の8月速報では、現金給与総額は前年同月比3.8%増、物価を考慮した実質賃金は同1.5%増でした。対象月が違うため、二つの数字は単純には差し引けません。
なぜ今?
2027年の春闘方針づくりが始まったためです。自動車総連の金子晃浩会長は10月26日、物価への追随だけでなく、生産性や働く人が生み出す価値を賃金に反映する議論が必要だとReutersに述べました。自動車は部品、販売、物流まで裾野が広く、他業種の賃金相場にも影響します。
第三者の見方
Reutersによると、自動車総連の2026年の妥結は定期昇給込み4.81%、うち基本給の底上げに当たる部分は3.58%でした。2027年の具体的な要求は今後正式に決まるため、「6%賃上げが実現する」とは判断できません。
生活・仕事への影響
働く人は、ニュースの6%より、自社の「定昇」「ベースアップ」「一時金」を分けて見る必要があります。手取りは税金や社会保険料の影響も受けます。中小企業は人件費が上がる一方、販売価格や取引単価に反映できなければ利益が細ります。採用難の職場では、初任給だけでなく既存社員の賃金や勤務条件の見直しが進む可能性があります。
過去の似た局面
2026年春闘の最終集計では、定期昇給込みの妥結率は5.01%、前年の5.25%を0.24ポイント下回りました。300人未満の中小組合は4.69%です。全体の賃上げ分は3.50%でした。要求と妥結、企業規模で差が出ることが分かります。
筆者の見方
基本シナリオは、高い要求が続き、実際の妥結率は企業業績に応じて分かれることです。注意シナリオは、中小企業で価格転嫁が進まず、賃上げ余力に差が広がることです。生活改善を判断するには、妥結率だけでなく、物価を引いた実質賃金と手取り、雇用の増減まで確認する必要があります。
今日できること
- 給与明細で基本給、残業代、手当、一時金を分けて確認する。
- 勤務先の昇給時期と、定昇・ベースアップの扱いを就業規則や社内案内で確認する。
- 経営側は、人件費が3%、5%、6%増えた場合の年間負担と価格転嫁余地を試算する。
人に話すなら一言
来春は6%が交渉の目安ですが、生活が良くなるかは基本給、手取り、物価の三つで決まります。
明日以降に見るポイント3つ
- 連合の正式方針:基本構想の数字が最終方針でどう整理されるかを見るため。
- 産業別・企業別の要求:6%の目安が自動車や中小企業へどこまで広がるかを見るため。
- 物価と実質賃金:賃上げ後に買える量が本当に増えるかを確かめるため。
用語解説
- 春闘=労働組合が春に集中して賃金や働き方を企業と交渉する取り組み。
- 定期昇給=年齢や勤続年数などに応じ、賃金表に沿って給与が上がる仕組み。
- ベースアップ(ベア)=賃金表そのものを引き上げ、基本給の水準を底上げすること。
- 実質賃金=受け取る賃金から物価上昇の影響を除いた、購買力を示す数字。
参照資料
一次情報
- 日本労働組合総連合会「2027春季生活闘争 基本構想」2026年10月22日
- 日本労働組合総連合会「2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果」2026年7月3日
- 総務省統計局「消費者物価指数 全国 2026年9月分」2026年10月23日
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年8月分結果速報」2026年10月7日