輸入28%増、4カ月連続赤字 家計の値上げはいつ届く?
ひとことで
8月の輸入は前年比28.0%増。家計は原油相場より、電気・ガソリン・食品の実際の改定日を確認。
情報の確かさ:二重確認済み
結論
財務省が9月16日に発表した8月の輸入額は、前年同月比28.0%増の11兆1540億円でした。輸出額の伸びを上回り、1兆1056億円の貿易赤字です。ただし、家計の物価が28%上がる数字ではありません。
何が起きた?
輸出額は前年同月比19.3%増の10兆484億円で、12カ月連続の増加。半導体等電子部品や自動車が増えました。輸入額は同28.0%増で7カ月連続の増加。原粗油や半導体等電子部品が押し上げました。貿易収支は4カ月連続の赤字です。
金額だけでなく量を見ると、輸入数量指数は前年同月比2.7%上昇です。輸入額の28.0%増との差は25.3ポイントあります。原油などの値上がりと為替の影響が大きいと読めます。
税関が使う8月の平均為替レートは1ドル160.64円で、前年同月の147.73円から8.7%の円安でした。原粗油の輸入額は58.7%増でしたが、Reutersによると輸入量は3.6%増です。
なぜ今?
輸入費は、電気・ガス、ガソリン、物流、食品や化学品の原料価格の入口です。企業が吸収するか、販売価格へ移すかで、家計へ届く時期と幅が変わります。輸出も伸びているため、日本企業全体が同じ方向に悪化しているわけではありません。
第三者の見方
Reutersは、輸入の伸びが2022年11月以来の大きさで、市場予想の26.3%も上回ったと報道しました。大和総研の秋元浩希氏は、原油高が到着時の輸入額へ反映されるまで約2カ月の遅れがあると指摘しています。APも赤字の主因を原油高と報じました。
生活・仕事への影響
すぐに給料、預金金利、住宅ローン、店頭価格が変わる統計ではありません。月3万円の電気・ガス・ガソリン代が仮に5%上がれば、負担は月1500円増です。ただし今回の統計から5%の値上げが決まったわけではありません。
企業が1万ドルを支払う場合、147.73円なら147万7300円、160.64円なら160万6400円。ドル単価が同じでも差は12万9100円です。自社の輸入額は、外貨単価、数量、運賃、為替に分けて見ましょう。
過去の似た局面
輸入の伸び率は2022年11月以来の大きさです。ただし今回は輸出も19.3%増えており、当時と原油価格、為替、需要は同じではありません。単月の赤字だけで景気全体は判断できません。
筆者の見方
第一は、輸入高が企業コストへ時間差で届く可能性です。価格転嫁の幅は業種で違います。第二は、輸出増が負担を一部補う可能性ですが、金額と数量を分ける必要があります。第三は、円高や原油安で輸入額が鈍る可能性です。方向は現時点では判断できません。
今日できること
- 家計は光熱費と燃料代を、使用量・単価・調整額に分ける。
- 企業は輸入費を外貨単価・数量・運賃・為替に分ける。
- 値上げ通知は対象商品、開始日、改定率を確認し、買い急がない。
人に話すなら一言
輸入額は28%増えましたが、家計が見るべきは平均ではなく実際の料金改定です。
明日以降に見るポイント3つ
- 原油価格と税関為替:輸入費の入口が続けて上がるかを見るため。
- 輸入の金額と数量:値上がりと実需の増減を分けるため。
- 企業物価と料金通知:輸入高が国内価格へ届いたか確かめるため。
用語解説
- 貿易収支(Trade Balance)=輸出額から輸入額を引いた差。
- 輸入数量指数(Import Volume Index)=価格変動を除き、輸入量の動きを示す指数。
- 税関為替(Customs Exchange Rate)=輸入品の課税価格などを円換算する際に使う為替レート。
参照資料
一次情報
- 財務省「令和8年8月分貿易統計(速報)の概要」PDF(2026年9月16日)